「また停まってる……。ここ、うちの店の横なんだけど」
最初に気づいたのは、2週間ほど前だった。
店を開けるために裏口へ回ると、壁際に見覚えのない黒いバイクが停まっていた。
最初は、
「近所の人が一時的に停めただけかな」
と思った。
その日は特に何もしなかった。
ところが翌日もある。
3日後もある。
1週間経っても、まるでそこが自分専用の駐輪場であるかのように停められていた。
店の横は広いわけではない。
荷物を運ぶ時に通るし、業者さんが来た時には邪魔になる。
何より、店側に一言もなく毎日のように置かれるのが気になった。
「警察を呼ぶほどなのかな……」
正直、そこまで大ごとにはしたくなかった。
バイクを勝手に動かして傷でも付けば、逆に面倒になる。
だから私は絶対に触らなかった。
その代わり、毎日停まっている時間と状態をスマホで記録した。
すると面白いことに、だいたい同じ時間帯に現れ、夕方になるとなくなる。
完全に「ここなら大丈夫」と思われている。
さすがに限界だった。
私は紙を1枚用意した。
怒鳴るような文章にはしなかった。
「ここは店舗の管理スペースです。荷物の搬入等で使用しますので、今後の駐車はご遠慮ください」
それだけ。
雨で飛ばないよう注意しながら、バイクの持ち主がすぐ気づく位置に案内を残した。
翌朝。
店へ行くと――
まだバイクはあった。
紙も残っている。
「やっぱり無視されるか……」
少し腹が立った。
しかしその日の夕方、閉店準備をしていると、店の外で人の気配がした。
窓から見ると、30代くらいの男性がバイクの前に立っていた。
紙を読んでいる。
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