「税金を取り締まる側の人が、約1億3500万円の脱税疑いって……どういうこと?」
手元にある納付書を見ながら、私は思わずため息をついた。
税額は25,547,800円。
もちろん、納めるべき税金なら払う。
会社員でも自営業でも、税金から逃げることはできない。
だからこそ、先日目にしたニュースには言葉を失った。
報道によると、竜ケ崎税務署に勤務していた25歳の職員が、競艇の払戻金など約3億3400万円の所得を申告せず、所得税およそ1億3500万円を免れた疑いで刑事告発されたという。
最初は数字を見間違えたのかと思った。
135万円ではない。
約1億3500万円だ。
しかも税務署といえば、私たち納税者の申告内容を確認し、必要があれば税務調査まで行う側だ。
その立場の職員自身に、これほど巨額の脱税疑惑が出た。
さらに驚いたのは、その先だった。
報道では、この元職員は税務調査を通じて知り合った高齢女性から、家族への仕送りなどと説明して約1億5000万円を受け取っていたとされている。
そのうち約85万円については、「修正申告に誤りがあり、追加の税金が必要」などと虚偽の説明をしたとして、詐欺の疑いでも刑事告発されたという。
ここまで読むと、もう怒りより寒気がした。
税金について詳しい。
制度も知っている。
納税者が何を不安に思うかも分かっている。
もし、その知識や立場が逆に利用されていたのだとしたら、単なる「申告忘れ」で済ませられる話ではない。
しかも不正で得たとされる金の多くは競艇につぎ込まれ、報道では8億円を超える舟券を購入していたとされている。
「税金はきちんと納めてください」
そう言われれば、私たちは従う。
期限を確認し、数字を何度も見直し、場合によっては何百万円、何千万円という金額を納付する。
だからこそ、取り締まる側には一般の納税者以上の倫理観が求められるはずだ。
今回、関東信越国税局はこの職員を8月7日付で懲戒免職とし、刑事告発した。
国税局も、税務行政への信頼を損なう行為だとして謝罪している。
私はもう一度、25,547,800円と印字された納付書を見た。
税金そのものに腹を立てているわけではない。
必要なものなら払う。
でも、納税者に厳しくルールを求める以上、そのルールを運用する側にも同じ、いや、それ以上の厳しさが必要だと思う。
約1億3500万円という数字が明るみに出て、最終的に懲戒免職と刑事告発に至ったことだけは、少なくとも「身内だから見逃す」という結末ではなかった。
信頼は、一度壊れれば簡単には戻らない。
税金を扱う仕事だからこそ、最後に守らなければならないのは、お金よりも「信用」なのだと思った。