買い物を終えて駐車場へ戻った私は、自分の車の前で立ち尽くした。
左隣に止まっている大型SUVが、黄色い区画線を大きく越えていたのだ。
SUVの右前輪は完全にこちらのスペースへ入り込み、車体は私の運転席側すれすれ。ドアを開けようとしても、わずか数センチしか動かない。
助手席側から乗り込むことも考えたが、買い物袋とチャイルドシートがあり、運転席まで移動するのは難しかった。
私はSUVのナンバーと駐車状態が分かる写真を撮り、時刻も記録した。午後2時07分だった。
車内に持ち主はいない。
近くの店舗で呼び出しをお願いしたが、20分待っても反応はなかった。
駐車場の管理会社へ電話すると、
「勝手に車両へ触れないでください。トラブル防止のため、その場でお待ちください」
と言われた。
仕方なくベンチで待った。
30分が過ぎ、45分が過ぎた。
その間にも駐車料金は加算されていく。予定していた用事にも間に合わなくなった。
結局、SUVの持ち主が戻ってきたのは、写真を撮ってからちょうど1時間後だった。
40代くらいの男性は、私と管理会社の担当者が待っているのを見ると、面倒そうに眉をひそめた。
「何かありました?」
私は車を指さした。
「区画線を越えていて、運転席のドアが開きませんでした。1時間待っています」
男性は自分の車を一度見ただけで、
「でも、ぶつけてないですよね?」
と悪びれずに言った。
「傷の話ではありません。車に乗れなかったんです」
「少しくらい助手席から入ればいいじゃないですか」
その言葉に腹が立ったが、私は声を荒らげなかった。
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