「何見てんだよ! 文句があるなら警察を呼べ!」
前を走る黒いミニバンの運転手が、窓から刺青の入った腕を突き出して怒鳴った。
その指先には、火のついたタバコが挟まれていた。
次の瞬間、男はそれを道路へ投げ捨てた。
赤い火の粉を散らした吸い殻が、私の車のすぐ前まで転がってくる。
私は思わず急ブレーキを踏んだ。
後部座席にいた子どもが、小さく悲鳴を上げた。
危険を知らせるため、私は短くクラクションを鳴らした。
すると男はバックミラー越しにこちらを見て、刺青の入った腕で挑発するような仕草をした。
それだけでは終わらなかった。
男はウインカーも出さず、突然車線を変更した。
しばらく異様にゆっくり走ったかと思えば、今度は急加速。
また減速。
後ろには七、八台の車が連なり、完全に渋滞ができていた。
それでも男は気にする様子もない。
分岐点に着くと、今度は道路の真ん中で突然停止した。
どうやら道に迷っているらしい。
私は十分な車間距離を取り、静かに待った。
無理に追い越せば、何をされるか分からない。
その間も、ドライブレコーダーはすべてを記録していた。
男は後ろを振り返り、私の車にカメラが付いていることに気づいたらしい。
急にバックランプが点灯した。
黒い車体が、じわじわとこちらへ近づいてくる。
私はすぐにクラクションを鳴らした。
衝突寸前で、男はようやく停止した。
そして勢いよく前進すると、ウインカーも出さずに道路沿いの店へ入っていった。
私はそのまま通り過ぎるつもりだった。
しかし男の車は、駐車場の入口を塞ぐように横向きに止まった。
私の車は進むことも戻ることもできない。
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