「この文章、本当に中学生が書いたんですか?」
保護者参観の日。
先生は息子の手紙を手にしたまま、困ったような表情を浮かべた。
私の息子には発達障害がある。
頭の中に思いがあっても、それを言葉にまとめることがとても苦手だ。
たった三行の作文に、一時間以上かかることも珍しくない。
書き始めては消す。
言葉が見つからず、鉛筆を握ったまま固まる。
それでも息子は、家族への感謝を伝える朗読会に参加したいと言った。
他の子どもたちは、原稿用紙二枚、三枚と書いていた。
難しい言葉を使い、きれいな文章を完成させていた。
一方、息子の手紙は二百字にも満たなかった。
字の大きさもそろっていない。
消しゴムで何度もこすった跡が残り、一部には書き間違いもあった。
後ろにいた生徒が、小声で笑った。
「これだけ?」
その言葉が聞こえたのか、息子は手紙を胸元へ隠した。
先生も私に近づき、声を落として言った。
「無理に読ませなくてもいいと思います」
「途中で止まってしまう可能性もありますから」
私は返事をせず、息子の横に座った。
「自分で読みたい?」
そう尋ねると、息子は下を向いたまま黙っていた。
やがて、紙の端を強く握りしめた。
「読みたい」
小さかったが、確かな声だった。
朗読会が始まった。
次々と子どもたちが壇上へ上がり、堂々と手紙を読んでいく。
笑いが起きる文章もあった。
感動的な内容には、大きな拍手が送られた。
そして、息子の名前が呼ばれた。
息子はゆっくり立ち上がった。
一歩ずつ壇上へ向かった。
手が震えていた。
紙も小刻みに揺れていた。
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