「電柱が倒れて、お前の車に直撃した!」
「電柱が倒れて、お前の車に直撃した!」
手術から七日目。
まだ病院のベッドから起き上がれない私に、家族から電話が入った。
送られてきた写真を見て、言葉を失った。
自宅の敷地に停めていた愛車の上へ、太い木製の電柱が斜めに倒れていた。
車体には深いへこみ。
フロントガラスにも大きな亀裂。
私は入院中で、一週間も車を動かしていない。
それなのに、現場へ来た管理会社の担当者は淡々と言った。
「風で倒れた可能性があります」
「天災の場合、修理費は所有者様のご負担になるかと」
だが、その日は快晴だった。
台風もない。
大雨もない。
強風の注意報すら出ていなかった。
家族に断面を撮影してもらうと、電柱の内部は黒く変色していた。
根元は崩れ、触れただけで木くずが落ちた。
明らかに長年の腐食だった。
それでも担当者は責任を認めなかった。
「古いことと、管理上の過失は別です」
「まずはご自身の車両保険を使ってください」
修理工場の見積もりは、八十万円を超えた。
保険を使えば免責金が発生する。
翌年以降の保険料にも影響する可能性がある。
なぜ、何もしていない私が負担するのか。
怒りで傷口まで痛むようだった。
さらに担当者は、家族へ一枚の書類を差し出した。
そこには、
「不可抗力により車両が損傷したことを確認する」
と書かれていた。
電話越しに内容を聞いた私は、すぐ止めた。
「絶対に署名しないでくれ」
担当者は露骨にため息をついた。
「電柱がわざと倒れたわけではありません」
「必要以上に大きな問題にしない方がいいですよ」
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