「こんな日に限って、どうして……」
家族ぐるみで長く付き合ってきた知人が亡くなった。
突然の知らせだった。
子どもが小さい頃から何度も一緒に食事をし、家族旅行の話をしたり、困った時には助けてもらったりした人だった。
スマホに届いた訃報を見た時、しばらく言葉が出なかった。
お通夜の会場までは、車で片道およそ1時間半。
往復すれば3時間近い。
仕事を終えてから急いで着替え、家族を乗せて車を出した。
「間に合うかな……」
時計を見るたび、焦りが増していった。
外は少し曇っていて、道路も普段より混んでいる。
前の車がゆっくり走るたび、
「もう少し早く進んでくれないかな」
そんなことばかり考えていた。
今思えば、心に余裕がなかったのだと思う。
亡くなったことがまだ信じられない。
最後に会った時の顔が何度も浮かぶ。
「今度またみんなでご飯行こうね」
そう笑っていた声まで聞こえてくるようだった。
気づけば、少しアクセルを踏み込んでいた。
そしてしばらく走ったところで――
後方から赤いランプが見えた。
「え……?」
ミラーを見る。
パトカーだった。
嫌な予感は的中した。
道路脇へ誘導され、車を止める。
家族全員、無言になった。
警察官が窓の横まで来て、
「少し速度が出ていましたね」
と言った。
私は一気に現実へ引き戻された。
「すみません……」
言い訳しようと思えばできた。
今日は知人のお通夜へ向かっていること。
会場まで遠いこと。
時間に間に合うか焦っていたこと。
でも、それでスピード違反がなくなるわけではない。
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