あの日のことを、私は今でも鮮明に覚えています。
娘がまだ生後2〜3ヶ月だった頃。
実家へ帰るため、私は初めて小さな飛行機に乗りました。
座席数は100席にも満たない機体。
逃げ場のない狭い空間。
そして、離陸してしばらくすると――
娘が突然、大きな声で泣き始めました。
「どうしたの?大丈夫だよ」
私は必死に抱きしめました。
背中をさすりました。
ミルクも確認しました。
オムツも替えました。
でも、娘は泣き止みませんでした。
機内いっぱいに響く赤ちゃんの泣き声。
周りの乗客の視線が気になりました。
「すみません……」
「本当にすみません……」
何度も小さな声で謝りました。
まだ母親になったばかりだった私は、頭の中が真っ白でした。
「迷惑だと思われているかもしれない」
「なんで飛行機なんか乗ったんだろう」
そんな不安で、私まで泣きそうになりました。
その時でした。
斜め前に座っていた1人の女性が、静かにこちらへ近づいてきました。
上品な雰囲気の年配の女性でした。
私は、
「申し訳ありません、うるさくしてしまって……」
と謝りました。
すると、その女性は優しく笑いました。
そして、小さな袋と折りたたんだメモを私に差し出したのです。
それは機内販売されていたハンカチでした。
そして、そこに書かれていた言葉。
「大丈夫、みんなこうして大きくなるのよ」
その一言を見た瞬間。
張り詰めていた気持ちが、一気に崩れました。
涙が止まりませんでした。
女性は続けて言いました。
「赤ちゃんは泣くのが仕事よ」
「お母さんは何も悪くないわ」
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