母の部屋を片付けていた時のことでした。
押し入れの奥にしまわれた古い箱。
何年も開けていなかったその箱を、私はゆっくり取り出しました。
母が大切にしていたもの。
昔の写真。
手紙。
使わなくなった小物。
一つずつ確認しながら整理していました。
母は最近、介護が必要になりました。
以前のように自由に動けなくなり、病院や介護サービスのお金もかかるようになっていました。
私は、
「これからの費用をどうしていこう」
と、ずっと考えていました。
そんな時でした。
古い封筒の中から、見慣れない紙の束が出てきたのです。
最初は、
「昔の書類かな?」
と思いました。
でも、手に取った瞬間、違和感がありました。
何枚も重なった厚み。
丁寧に揃えられた紙。
そして見えた数字。
「え……これ、お金?」
驚いて中を確認すると、そこには大量の百円札が入っていました。
しかも、ただの古いお札ではありませんでした。
ピン札。
未使用のような綺麗な状態。
さらに番号を見ると、連番で揃えられていました。
私はしばらく動けませんでした。
「母は、こんなものをずっと持っていたんだ……」
今ではほとんど見ることのない百円札。
なぜ母は大切に保管していたのでしょうか。
私はすぐに母へ聞きました。
「これ、どうしたの?」
すると母は少し照れたように笑いました。
「昔ね、いつか何かあった時のためにと思って取っておいたの」
その言葉を聞いた瞬間、胸がいっぱいになりました。
母は昔から節約家でした。
自分の服は後回し。
欲しいものがあっても我慢。
家族のためなら、自分のことはいつも最後でした。
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