「うわあああっ!」
午後3時過ぎ、廊下の奥から突然、大きな叫び声が聞こえた。
事務所にいた全員が顔を上げた。
「今の何?」
私は椅子から立ち上がり、声がしたトイレの方へ向かった。
すると途中で、今年入社したばかりの新卒社員とすれ違った。
顔は真っ赤。
呼吸も少し荒い。
こちらとは目を合わせず、足早にその場を離れていった。
「……どうした?」
声をかけても、
「いや、別に何でもないです」
それだけ。
妙な胸騒ぎがした。
そしてトイレの前まで行った瞬間、私は立ち止まった。
「嘘だろ……」
個室のドアの中央が、大きく割れていた。
木目調の表面は裂け、中の素材まで見えている。
明らかに自然に壊れたようには見えない。
さっきの叫び声。
直後に出てきた新卒。
そして、このドア。
周囲にいた社員たちも集まってきた。
「これ蹴ったんじゃない?」
「さっき出てきたの、あいつだよな」
「新卒でこれは終わりでしょ」
そんな声が次々に上がった。
課長まで現場を見て、
「これはさすがに会社として放置できないな」
と険しい顔をした。
しかし私は、すぐ本人を犯人扱いするのはやめた方がいいと思った。
状況的にはかなり怪しい。
それでも「近くにいた」というだけで決めつければ、後で話が変わった時に面倒になる。
まず壊れたドアをスマホで撮影。
発見時刻も記録した。
さらに、その時間帯に誰がトイレ周辺を通ったのか確認することになった。
数十分後。
新卒社員が会議室へ呼ばれた。
最初は、
「知りません」
「入った時から少し壊れてました」
と言っていた。
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