電車のドアが開いた瞬間、車内に少年の苛立った声が響いた。
見ると、中高生くらいの少年が、車椅子やベビーカーのための優先スペースを占領していた。
壁際の設備用コンセントに充電器を差し込み、スマホを握ったまま動こうとしない。
足元には大きなリュック。
床には長い充電ケーブルが垂れていた。
そしてドアの外には、今まさに乗車しようとしている車椅子の男性がいた。
しかし、少年の荷物とケーブルが邪魔で、車椅子は安全に入れない。
ホームの係員がすぐに声をかけた。
「申し訳ありませんが、いったんコードを抜いて、こちらを空けてください」
少年は露骨に舌打ちした。
そして、ほんの少しだけ体を横にずらした。
だが、それだけでは車椅子は通れない。
「もう避けたじゃん」
少年は面倒そうに言った。
「そもそも車椅子って場所取りすぎじゃない?」
その一言で、車内の空気が一瞬にして凍った。
車椅子の男性は申し訳なさそうに視線を落とした。
「次の電車にしますので、大丈夫です」
私はその言葉を聞いた瞬間、我慢できなくなった。
「どうしてあなたが次の電車を待つんですか?」
少年の前に立ち、床の車椅子マークを指さした。
「ここは、あなたがスマホを充電するための場所ではありません」
「車椅子やベビーカーを利用する人のためのスペースです」
少年は私をにらんだ。
「ちょっと充電してるだけだろ」
「俺、学生なんだけど。スマホが切れたら親と連絡できないじゃん」
まるで学生なら何をしても許されると言わんばかりの態度だった。
「スマホの電池がなくなることと、人の乗車を妨げることは別です」
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