飛行機が離陸して、シートベルト着用サインが消えた直後だった。
隣に座っていた男性が、突然大きく両脚を開いた。
右膝は座席の境目を越え、そのまま私の膝に押しつけられた。
さらに、私との間にある肘掛けだけでなく、反対側の肘掛けまで独占している。
私は窓側へ体を寄せた。
けれど、逃げられる場所などほとんどなかった。
「すみません。少し脚を閉じてもらえますか?」
できるだけ穏やかに声をかけた。
男性はスマホから目も上げず、面倒そうに答えた。
「エコノミーなんだから狭いのは当たり前でしょ」
「少しくらい我慢できない?」
仕方なく、私はさらに体を小さくした。
だが、10分もしないうちに、男性の脚はまた広がってきた。
私の膝を押し、足元のスペースまで奪っていく。
一度は脚を引いたものの、私が窓の外を見た瞬間、また元通りだった。
その後、機内サービスのワゴンが近づいてきた。
私は飲み物を置くためにテーブルを出そうとした。
しかし、男性の腕と脚に塞がれ、テーブルを最後まで下ろせない。
「本当に困ります。こちらにはみ出さないでください」
もう一度伝えると、男性はようやく私を見た。
そして、鼻で笑った。
「男は骨格が大きいんだよ」
「脚を閉じて座れっていうほうが無理だろ」
さらに、私の体を上から下まで見て言った。
「あなた細いんだから、もう少し譲ればいいじゃん」
その言葉で、私の中の何かが切れた。
同じ運賃を払っているのに、なぜ私だけが体を縮めなければならないのか。
私はスマホを取り出した。
男性の膝が座席の中央線を越え、私の前まで入り込んでいる様子。
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