夕方の駅構内は、帰宅する人たちで混み合っていた。
私は改札へ向かう途中、広場の真ん中に人だかりができていることに気づいた。
最初は何かのイベントかと思った。
音楽が流れ、若い男女が手拍子をしながら踊っている。
その中心には、白い花びらを撒く人までいた。
けれど、次の瞬間、私の足は止まった。
そのフラッシュモブの輪の外側で、白杖をついた女性が立ち尽くしていたのだ。
女性は点字ブロックに沿って進もうとしていた。
しかし、その進路を踊っている人たちが完全に塞いでいた。
彼女が少し右へ動けば、誰かの足が前に出る。
左へ避けようとすれば、スマホを構えた見物人が邪魔になる。
白杖の先が人の靴に当たるたび、彼女は小さく「すみません」と頭を下げていた。
周りからも声が上がった。
「何あれ、通してやれよ」
「点字ブロックの上で踊るなよ」
けれど、踊っている人たちは笑顔のままだった。
むしろ、誰かが小声で言った。
「もう少しで主役が来るから、そのまま」
私はその言葉に違和感を覚えた。
主役。
まさか、と思った瞬間、音楽が一段と大きくなった。
人垣の奥から、スーツ姿の男が花束を抱えて現れた。
彼は白杖の女性の前に進み出ると、片膝をついた。
「真由、結婚しよう!」
駅構内に歓声が起きた。
スマホを構えた人たちが一斉に録画を始める。
フラッシュモブの参加者たちも、拍手をしながら「おめでとう」と声を上げた。
だが、真由さんと呼ばれた女性は、笑わなかった。
彼女は花束の方を見ず、静かに白杖を握り直した。
男は少し焦った声で続けた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=1NML6gdo7HI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]