「私は一度も、あなたに介護してくれなんて頼んでいないわよ」
親戚八人が集まった夕食の席で、義母・和子はまるで天気の話でもするように、淡々と言いました。
その瞬間、部屋の空気が凍りつきました。
私は十年間、彼女のために人生の多くを捧げてきました。
毎日の食事作り、薬の管理、通院の付き添い、入浴介助。夜中に体調を崩せば、眠い目をこすりながら病院へ走りました。
それでも和子は、親戚たちの前で笑いながら続けたのです。
「勝手に世話を焼いていただけでしょう? だから遺産を残すつもりなんてないわ。嫁には一円も渡さないから」
隣にいた夫・光一は、止めることもしませんでした。
「母さんの冗談だろ。そんなに怒るなよ」
弟の俊介も、ビールを飲みながら軽く笑いました。
「兄嫁さんも大変ですね」
まるで他人事でした。
でも、その時の三人はまだ知りませんでした。
私がもう決断を終えていたことを。
私は怒鳴りませんでした。
涙も流しませんでした。
ただ、エプロンのポケットから一冊の古びたノートを取り出しました。
それは、義母の命を守るために書き続けた十二冊目の介護ノートでした。
ページを開き、最後の記録を書き込みます。
「20時30分。服薬確認。体温36.5度。食事摂取量8割」
そして私は静かにノートを閉じました。
パタン……。
小さな音が、妙に大きく響きました。
「そうですか……頼んでいなかったのですね」
私は和子をまっすぐ見つめました。
「勝手なことをして申し訳ありませんでした」
「明日からは、息子さんたちにお願いします」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=fsOLJN6z1xA,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]