先輩の田村さんが免許取り消しになったのは、春先のことだった。
理由は詳しく知らされていなかったが、社内では「無理な追い越しで事故を起こしたらしい」と噂されていた。
営業職にとって車は必需品だ。
そのため田村さんは、しばらく後輩の車に同乗して取引先へ回ることになった。
そして、その担当に選ばれたのが私だった。
最初は、仕方がないと思っていた。
先輩を支えるのも仕事の一部だと、自分に言い聞かせていた。
けれど、助手席に座った田村さんは、ハンドルを握らない立場になっても態度だけは変わらなかった。
「遅い遅い。今の信号、行けただろ」
「そこで譲るなよ。だから女の運転はとろいんだよ」
「とろっくせえなあ!何やってんの?あーイライラする」
その声が飛ぶたび、私は肩に力が入り、いつもの道でさえ怖くなった。
注意されるほど視野は狭くなり、ブレーキを踏むタイミングまで分からなくなる。
運転中に怒鳴られることが、こんなにも危険だとは思わなかった。
ある日、取引先へ向かう途中、田村さんはまた苛立った声を出した。
「今の右折、もっと早く行けただろ。
俺ならもう着いてるぞ」
私は唇を噛んだ。
その時、横断歩道の陰から小学生が飛び出してきた。
もし田村さんの言葉に焦ってアクセルを踏んでいたら、間違いなく危なかった。
私は急ブレーキをかけ、心臓が嫌な音を立てた。
田村さんは一瞬黙ったが、すぐに舌打ちした。
「だから急ブレーキになるんだよ。予測が甘いんだよ」
その瞬間、私の中で何かが切れた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=gv5FLNwV6yg,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]