十年以上前、夫の妹である沙織さんが亡くなった。
当時、沙織さんはまだ三十二歳。
小学生の息子を育てながら、パートと家事をこなす穏やかな女性だった。
けれど、夫の健二さんは彼女に対して、いつも冷たかった。
親族の集まりでも平気で言った。
「うちの嫁は本当に要領が悪い」
「飯も掃除も中途半端。使えないんだよ」
沙織さんはそのたびに苦笑いし、「私が遅いだけだから」と小さく答えていた。
ある冬の朝、沙織さんは台所で倒れた。
第一発見者は、夫の健二さんだった。
けれど彼は、すぐに救急車を呼ばなかった。
後から聞いた話では、床に倒れている沙織さんを見て、こう吐き捨てたらしい。
「またサボって寝てるのかよ。クズ嫁が」
そして彼は、そのまま仕事へ行った。
昼過ぎ、学校から帰った息子が倒れている母親を見つけ、泣きながら祖母に電話した。
救急搬送された時には、すでに手遅れだった。
医師は、もう少し早ければ違った可能性もあったとだけ告げた。
葬儀の日、健二さんは人前で泣いた。
「俺がもっと早く気づいていれば」
その言葉に、親族は同情した。
私も当時は、彼も苦しんでいるのだと思っていた。
けれど、違った。
数年後、沙織さんの息子である拓也くんが高校生になった頃、法事の席でぽつりと言った。
「あの日、父さんは母さんを見てたんだよ」
部屋の空気が止まった。
拓也くんは、震える声で続けた。
「朝、台所の方から父さんの声が聞こえたんだ。“クズ嫁”って。僕、布団の中で聞いてた。でも母さんが本当に倒れてるなんて思わなかった」
健二さんの顔色が一気に変わった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=OmHL7GU_dtI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]