「お母さん、1,000円じゃ足りないかも……」
お祭り当日の朝、小6の娘が少し寂しそうに言った。
今日は仲良しの友達数人と、近所のお祭りへ行く予定。
子ども同士で話し合い、持っていくお金は1人1,000円までと決めていた。
ところが前日に屋台の値段を調べてみると、
焼きそば500円。
フライドポテト400円。
かき氷300円。
くじ引き500円。
娘は電卓を叩きながら、
「焼きそばとポテト食べたら900円だよ。もう何もできないじゃん」
と肩を落とした。
「じゃあ、少しだけ予算を増やす?」
私が聞くと、娘はすぐ首を振った。
「それはダメ」
理由を聞いて、私は黙った。
一緒に行く友達の1人が、
「うちは1,000円以上は出せない」
と話していたらしい。
自分だけお金を多く持って行けば、その子が気を遣う。
だからみんな1,000円で遊ぼうと決めたという。
その話を聞いて、私は少し嬉しくなった。
でも娘は、
「お昼だけで半分なくなるの、ちょっと悲しいな」
とため息。
そこで私は言った。
「じゃあ、お昼を家から持って行けば?」
娘が顔を上げた。
冷蔵庫を見ると、焼きそばの麺とウインナーがある。
私はすぐフライパンを出した。
焼きそばを炒め、ウインナーも焼く。
小分けのパックに詰め、食べやすいように箸も入れた。
「友達にも食べてもらったら?」
すると娘は少し迷った。
「でも、“お金ないからこれ食べて”みたいになったら嫌じゃない?」
その言葉に私はハッとした。
確かにその通りだった。
善意でも、渡し方を間違えれば相手を傷つけることがある。
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