引き出しを整理していたら、奥から古い通帳が1冊出てきた。
何気なくページを開いた瞬間、私は手を止めた。
「……こんな時代、あったなあ」
日付は19年前。
当時、大学生の息子と高校生の娘を育てていた頃の通帳だった。
記帳欄には、給与の入金。
電気代、電話代、ガソリン代、カードの支払い。
そして、息子への仕送りと大学の授業料。
ある月には70万円ほど入金されている。
一見すると余裕があるように見えるが、その直後には30,000円、600,000円と大きな支払いが続き、残高は一気に減っていた。
110,749円。
73,455円。
70,385円。
51,646円――。
数字を追っているうちに、忘れていた当時の生活が次々と蘇った。
息子は県外の大学へ進学していた。
家賃も食費も必要だったため、半年分の生活費をまとめて送ることもあった。
ある日、息子から電話が来た。
「母さん、授業料の期限、来週だった」
私は一瞬、言葉に詰まった。
その月は娘の学校関係の支払いも重なっていたからだ。
それでも、
「分かった。こっちは心配しなくていいから、勉強しなさい」
そう答えた。
電話を切ったあと、私は通帳と電卓をテーブルに並べた。
あと何万円ある。
給料日は何日後。
電気代はこの日。
ガソリン代も必要。
娘の教材費もある。
足りない分には、生命保険から出た配当金を回した。
当時の私は、毎月そんな計算ばかりしていた。
ところが子どもたちは、そんな事情をほとんど知らなかった。
ある晩、娘が、
「お兄ちゃんには毎月お金送ってるのに、私の欲しい服はダメなの?」
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