俺がその古い団地に住んでいたのは、十数年前の夏だった。
築40年以上の4階建てで、エレベーターはなく、階段にはいつも湿ったコンクリートの匂いがこもっていた。
昼間は年配の住人ばかりで静かだったが、夜になると、どこからともなく虫の声と古い配管のきしむ音が聞こえてくる。
最初の異変は、玄関前の踊り場に置かれた小さな茶色い紙袋だった。
手のひらに乗るほどの大きさで、見た目は何の変哲もない。
忘れ物かと思い、1日放っておいた。
けれど翌日も同じ場所にあり、捨てても捨てても、朝にはまた戻っていた。
4日目の夜、俺は犯人を見つけようと玄関に椅子を置き、覗き穴を見張った。
深夜11時過ぎ、向かいの部屋のドアがゆっくり開いた。
出てきたのは、ぼさぼさの髪をした女だった。
色あせた大きなトレーナーを着て、手には例の紙袋を持っている。
女は無言でそれを俺の玄関前に置いた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=pCBdRFOT-4g,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]