「ちょっと待って……これ、本当に家の壁にいるの?」
夜、何気なく窓の方を見た瞬間、私は完全に動きを止めた。
壁に張り付いていたのは、手のひらより大きく見える1匹のクモ。
しかも、ただ大きいだけじゃない。
脚には黒い模様が規則的に並び、胴体にもまるで誰かが筆で描いたような濃淡がある。
怖い。
でも、正直ちょっと見入ってしまった。
「しかし、すごいデザインだわ……」
思わず口から出たその一言に、隣にいた夫が振り返った。
「何が?」
私が無言で壁を指さすと、夫の表情が一瞬で変わった。
「うわっ!でかっ!」
そこから家の中はちょっとした騒ぎになった。
夫はすぐに殺虫剤を持ってこようとする。
私は慌てて止めた。
「待って!こんな大きいの、変に刺激して走り出したらもっと怖い!」
すると今度は息子がスマホを持って近づいてきた。
「写真撮りたい!」
「近づかないで!」
夫は殺虫剤。
息子は撮影。
私はとにかく距離を取りたい。
3人の意見が完全にバラバラだった。
しかも当のクモは、こちらの騒ぎなど気にしていないように、壁の上でじっと動かない。
その姿をよく見ると、不思議なくらい堂々としている。
「これ、もしかして家の中の虫を食べてくれるタイプじゃない?」
息子がそう言った。
確かに、むやみに殺すのも少し気が引ける。
とはいえ、このサイズと同じ部屋で一晩過ごす勇気はない。
結局、近所で虫に詳しい知人に写真を送って相談することにした。
数分後、返事が来た。
「種類は写真だけでは断定できないけど、素手では触らない方がいいよ。無理に追い回さず、外へ出せるなら距離を取って誘導して」
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