新店舗のオープン初日、駐車場は朝から混雑していた。
私は大手流通会社の社員として、入口付近で車の誘導を担当していた。
昼前、派手に改造された黒い車が、身体障害者用の駐車スペースへ入ってきた。運転席から降りたのは30代くらいの男性だった。
少し離れた場所では、車いすを載せた車が空きを待っている。
私は男性に近づき、丁寧に声をかけた。
「こちらは必要な方のためのスペースです。ご利用証などをお持ちでなければ、一般区画へ移動をお願いします」
男性は面倒そうに右手を上げた。
「俺、指が動かないんだよね。これも障害だろ?」
しかし、その指で器用にスマートフォンを操作している。
確認のためフロントガラスを見ようとすると、男性は突然声を荒らげた。
「勝手に人の車をのぞいてんじゃねえ!」
「利用資格を確認しているだけです」
私が冷静に答えると、男性は胸元の名札をにらみつけた。
「お前、名前は? 俺はこの辺じゃ顔が利くんだ。俺を怒らせたら、ただじゃ済まねえぞ。住所も家族も全部調べてやるからな」
周囲のお客様が足を止めた。
私は怖がる様子を見せず、名札が見えるように姿勢を正した。
「どうぞ。ただし、今の発言と車両番号は記録します。防犯カメラにも残っています」
そこへ店長と警備員が到着した。逃げ道を失った男性は、悪態をつきながら車を一般区画へ移動させた。
空いたスペースには、待っていた車いす利用者の車が入った。
私はその日のうちに、男性の発言、時刻、車両番号を業務日報へ記載した。
それから3日後、自宅に高級菓子の箱が届いた。
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