「こんな朝食なら、作らないほうがマシじゃない?」
朝、まだ眠そうな顔で夫が言った。
その瞬間。
私は箸を持ったまま、動けなくなった。
テーブルの上には、私が朝早く起きて作った朝食。
唐揚げ。
サラダ。
玄米。
味噌汁。
少しでも健康でいてほしいと思って、考えながら作ったものだった。
でも夫が最初に言った言葉は、
「ありがとう」
ではなかった。
「唐揚げ、大きすぎる」
「サラダ、草みたいで食べにくい」
「玄米は硬いから白米にして」
まただ。
私は小さくため息をついた。
結婚してから何年も。
私は毎朝、夫より30分早く起きていた。
前日の夜に献立を考える。
冷蔵庫の中身を確認する。
栄養バランスを調べる。
忙しい日でも、できるだけ手作りする。
なぜなら。
大切な人には元気でいてほしかったから。
最初の頃は、夫も言っていた。
「毎朝ありがとう」
「助かるよ」
その言葉が嬉しくて。
私はもっと頑張ろうと思った。
でも、いつからだろう。
感謝の言葉は消えて。
代わりに批評ばかりになった。
「味が薄い」
「量がおかしい」
「もっと普通に作れないの?」
普通って何?
私は毎日、あなたのために考えているのに。
そんな気持ちを飲み込んできた。
家族だから。
夫も仕事で疲れているから。
そう自分に言い聞かせていた。
でも。
その日の朝。
また料理を否定された瞬間。
私の中で何かが切れた。
私は静かに立ち上がった。
そして。
エプロンを外した。
「じゃあ、今日から自分で作って」
夫は驚いた顔をした。
「え?」
「俺が?」
私は笑った。
でも、笑顔ではなかった。
「あなたの理想の朝食、私にはもう分からないから」
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