弟が念願のスポーツカーを買ったのは、去年の春だった。
赤い車体に低い車高、エンジン音も独特で、車に詳しくない私でも「大事にしているんだな」と分かる一台だった。
弟は休日になると自分で洗車をし、雨の日は極力乗らず、駐車場にもカバーをかけていた。
そんな弟の車に目をつけたのが、同じマンションに住む若い奥さんだった。
彼女は以前から少し距離感のおかしい人で、会えば「それどこで買ったの?」「今度貸して」などと、遠慮のないことを平気で言うタイプだった。
ある夕方、弟が駐車場で車を拭いていると、その奥さんが満面の笑みで近づいてきた。
「ねえ、その車かっこいいね。うちの夫と旅行に行きたいから、その車貸してよ!」
私は横で聞いていて耳を疑った。
いくら近所でも、他人のスポーツカーを旅行用に貸してほしいなど、普通は言わない。
弟もさすがに断るだろうと思った。
ところが弟は、にこっと笑って言った。
「いいっすよ^^」
私は思わず弟を見た。
奥さんは目を輝かせた。
「本当? じゃあ土曜の朝に借りに来るね。夫にも言っておくから!」
そう言い残して、彼女は上機嫌で去っていった。
私はすぐ弟に詰め寄った。
「本気で貸すつもり?」
弟は洗車用のタオルをたたみながら、平然と答えた。
「貸すとは言ったけど、無料で無条件に貸すとは言ってないよ」
その時の弟の顔を見て、私は少しだけ嫌な予感がした。
そして約束の日の朝。
奥さんは大きな旅行バッグを持ち、隣には困惑した表情の夫を連れて現れた。
奥さんは当然のように手を差し出した。
「じゃあ鍵ちょうだい。早く出ないと渋滞するから」
弟は笑顔のまま、封筒を差し出した。
「その前に、こちらに記入をお願いします」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=zOsD0vUVgbc,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]