兄が上京して、その背中を見送った翌日のことだった。いつものように大学の講義を終え、慣れ親しんだアパートの扉を開けた俺は、その光景に言葉を失った。
そこにあったはずの俺の家具、衣類、本、趣味の道具――すべてが忽然と消えていた。まるで最初から何もなかったかのように、部屋はただの空っぽの空間へと変貌していた。呆然と立ち尽くす俺の背後から、聞き慣れた足音が響く。
「あんた、誰?」
振り返ると、そこには母が立っていた。しかし、その瞳には俺を知る者の温かさはなく、通りすがりの他人を見るような冷酷な色が宿っていた。
「母さん、何を言ってるんだ? 俺だよ。……どうして部屋がこんなことになってるんだ?」
俺が問いかけても、母は眉一つ動かさない。それどころか、まるで邪魔者を見るかのように冷たく言い放った。
「誰の許可を得て入ってきたの。出ていきなさい。あんたなんか知らない」
その一言が、俺の日常を根底から破壊した。何が起きているのか理解できないまま、俺はアパートの鍵を取り上げられ、文字通り「家」を追い出された。
その日から、俺の地獄が始まった。
所持金はわずか。
頼れる友人もおらず、実家も遠方で、兄とは連絡が取れない。俺は駅のベンチを寝床に、数日間を過ごすことになった。冷たい夜風が吹き抜けるベンチの上で、俺は何度も自問自答した。「なぜ、母は俺を忘れたのか? それとも、俺以外の何かが母を支配しているのか?」
深夜の駅のホームで、遠くの街灯を見つめながら、俺は一人のホームレスと出会った。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Ov0MEbErWjA,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]