その日は、総武快速・横須賀線に乗っていた。
車内は混雑していたものの、身動きが取れないほどではなかった。
私は次の駅で降りるため、少し早めにドアの近くへ移動しようとした。
そこで、目の前の光景に言葉を失った。
ドアの前いっぱいに、大量の荷物が並べられていた。
黒いスーツケース。
ピンクのスーツケース。
青い大型ケース。
迷彩柄のバッグ。
ボストンバッグ。
手提げ袋。
ぬいぐるみまで載っている。
数えると、少なくとも7個はあった。
まるで空港の荷物受取所だった。
しかし、ここは電車の出入口だ。
駅に着けば、人が降りる。
ホームからは人が乗ってくる。
緊急時には避難経路にもなる。
それなのに、ドアの前には足を置く場所さえ残っていなかった。
荷物の持ち主らしきグループは、近くの座席に座っていた。
楽しそうに話している。
誰かが荷物へ近づいても、特に動かす様子はない。
私は最初、
「次の駅で降りるのかもしれない」
と思った。
それなら、すぐ運び出すために一時的に置いている可能性もある。
そう考え、しばらく様子を見た。
ところが、電車が駅に着いても何も変わらなかった。
ドアが開いた。
ホームで待っていた人たちが、一斉に止まった。
乗ろうとしても、荷物が邪魔で入れない。
車内から降りようとした女性も、スーツケースの間を横向きですり抜けようとした。
その瞬間、バッグの持ち手に足が引っかかった。
女性の体が大きく傾いた。
近くの男性が腕を支えたため転ばずに済んだが、もう少しでホームとの隙間へ倒れるところだった。
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