北海道を旅行中、私は道路脇で妙な光景を見つけた。
青いジムニーが大きく傾き、左側のタイヤを縁石の上に乗せたまま停まっていた。
車体の半分は歩道。
反対側は車道にはみ出している。
あまりにも不自然だったため、私は状況が分かるように写真を一枚撮った。
すると、近くの店先に座っていた高齢の男性が突然立ち上がった。
「勝手に撮るな!」
どうやら車の持ち主らしい。
「すぐ消せ。これはジムニーだぞ。こんな段差、何ともない」
男性は誇らしげに車を指さした。
私は車の性能を問題にしているのではなかった。
歩道が塞がれ、後ろから来る車も、そのたびに速度を落として避けている。
「ここに停めたら、歩行者が通れませんよ」
私が伝えると、男性は鼻で笑った。
「北海道は道が広いんだ」
「旅行者が地元の人間に運転を教えるな。景色だけ見て帰れ」
その直後だった。
赤ちゃんを乗せたベビーカーを押す女性が歩いてきた。
しかし、ジムニーが歩道を塞いでいるため通れない。
女性は仕方なく車道へ出ようとした。
ちょうど後ろから貨物車が近づいていた。
運転手が慌ててブレーキを踏み、大きくよける。
女性は驚いてベビーカーを引き戻した。
あと一歩遅ければ、接触していたかもしれない。
「危ないでしょう。今すぐ車を移動してください」
私が強く言うと、男性は顔を真っ赤にした。
「俺は何十年も運転してる!」
「これくらい簡単に下りられる。よく見てろ!」
男性は運転席に乗り込み、エンジンをかけた。
ところが、縁石から下りようとした瞬間、タイヤが空転した。
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