高校一年生の息子にそう言われた瞬間、私は五年前に離婚した元夫の顔を思い出した。
その日、私は大学の公開授業を見学して帰宅した。
息子は風呂に入っていた。
リビングのテーブルに置かれたスマホが、短い間隔で三回光った。
「私だけが好きって言ったよね?」
「昨日の電話、誰としてたの?」
「今日で付き合って三か月なのに、忘れたの?」
表示された名前は、すべて違っていた。
嫌な予感がした。
息子が戻ってきたので、私はスマホを指さした。
「これはどういうこと?」
一瞬だけ目をそらした息子は、すぐに不機嫌な顔になった。
「勝手に見るなよ」
「三人と付き合っているの?」
私が尋ねると、息子は鼻で笑った。
「向こうが勝手に本気になっただけ」
「男が同時に何人か好きになるのは普通だろ」
その言葉まで、元夫と同じだった。
五年前。
元夫の浮気が発覚した時、彼は私にこう言った。
「男は一人だけを愛するようにはできていない」
私は息子だけは、あの人のようにしたくなかった。
離婚後の五年間、仕事を掛け持ちしながら、一人で育ててきた。
ところが息子のスマホには、三人の女子生徒に送った全く同じ告白文が残っていた。
「出会った時から運命だと思っていた」
同じ文章。
同じ絵文字。
同じ言葉。
記念日のプレゼントまで、色違いの同じ品だった。
さらに、友人とのグループチャットには、三人とのやり取りを貼り付けて笑うメッセージがあった。
そして、一番下には元夫からの助言が並んでいた。
「履歴は定期的に消せ」
「バレたら、女のほうから迫ってきたと言え」
「泣かれたら謝ったふりをして、少し距離を置け」
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