「二度と刺身食うなよ、マジで」
その言葉が出そうになったのを、私は必死で飲み込んだ。
週末、友人たちと集まって居酒屋に行った。
久しぶりの飲み会で、最初はみんな機嫌がよかった。
刺身の盛り合わせが運ばれてきた時も、テーブルの空気は明るかった。
マグロ、サーモン、タイ、イカ。
きれいに並べられた皿を見て、私は思わず「おいしそう」と言った。
ところが、その空気を一瞬で壊した人がいた。
友人の一人が、まだ誰も箸をつけていない刺身にいきなり手を伸ばした。
しかも、自分の小皿に取るのではなく、盛り皿の上でわさびをぐちゃぐちゃに混ぜ、醤油を直接かけ始めた。
「え、ちょっと待って」
誰かが小さく言った。
でも本人は笑っていた。
「こうした方が味ついてうまいじゃん」
その瞬間、全員の箸が止まった。
刺身は、もう見た目も味も台無しだった。
醤油が皿の底にたまり、わさびがあちこちに広がっている。
せっかく店員さんがきれいに盛ってくれた一皿が、見る影もなくなっていた。
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