「昨日みたいなもんだろ。許容範囲内だ」
夫はそう言って、冷蔵庫から取り出したバターの箱をテーブルに置いた。
私は一瞬、言葉を失った。
箱にははっきりと書かれていた。
賞味期限、26年9月4日。
今日は10月。つまり、もう1ヶ月以上過ぎている。
しかも未開封とはいえ、ただの乾物ではない。雪印北海道バター。料理にもパンにも使う、家族の口に入るものだった。
「これ、期限切れてるよ」
私がそう言うと、夫はまったく気にしていない顔で笑った。
「昨日みたいなもんだろ」
「昨日じゃないよ。1ヶ月以上だよ」
「バターなんて大丈夫だって。腐ってたら匂いで分かるし」
その軽さに、私は胸の奥がざわついた。
たしかに、賞味期限は「おいしく食べられる目安」であって、消費期限とは違う。1日や2日なら気にしない人もいると思う。私だって、何でもすぐ捨てたいわけではない。
でも問題はそこではなかった。
夫は箱を確認もせず、匂いも見ず、ただ「大丈夫」と決めつけていた。
しかも、それを子どもの朝食に使おうとしていたのだ。
私は静かにバターの箱を手に取った。
「じゃあ、まず自分で食べてから言って」
そう言うと、夫は少しムッとした顔をした。
「なんでそんな言い方するの?もったいないじゃん」
「もったいないのは分かる。でも確認もしないで家族に出すのは違う」
夫は納得していない様子で、椅子に座った。
「未開封なんだから平気だって」
その言葉を聞いて、私はスマホで食品メーカーの保存方法を調べた。未開封でも、保存状態によって品質は変わる。
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