網戸越しに、庭でしゃがみ込む人影が見えた。
最初は業者かと思った。けれど、すぐに違うと分かった。見覚えのある白い帽子、腰を丸めて砂利をいじる背中。前にも何度も見た、隣の家の親世代の夫婦だった。
私はその場で息を止めた。
まただ。
9月5日にも、同じように無断で庭に入られていた。砂利を踏む音がジャリ、ジャリ、と家の中まで響き、窓からのぞいたら、当然のような顔で作業していた。
その時、私はさすがに我慢できなかった。
「なんで毎回毎回、作業前に一言言えないんですか!?砂利の音がするの、迷惑なんです!」
私がそう言うと、年配の女性はへらへら笑って「すみませ〜ん」と軽く頭を下げただけだった。
年配の男性のほうは、分かりやすく顔を強張らせていた。
「すいませんねぇ!」
謝っている言葉なのに、声には怒りが混じっていた。
その態度を見た瞬間、私は思った。
この人たちは、悪いことをしたと思っていない。ただ、怒られたから形だけ謝っているだけだと。
そもそも無断侵入は、家の建築中から始まっていた。
境界がまだはっきりしていなかった時期なら、多少の行き違いもあるかもしれない。そう思って、最初は見逃していた。
けれど家が完成し、庭も整い、砂利も敷き、明らかに「人の家の敷地」になってからも、状況は変わらなかった。
「庭に入って作業していいですか?」
その一言が、一度もなかった。
隣の子世帯の家に来ているのか、息子夫婦の家なのか娘夫婦の家なのかは知らない。けれど、わざわざ車でやって来て、勝手に庭をいじり始める。
人の家に迷惑をかけないとできないDIYなら、もうやめたらいいのに。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください