私はみさ、38歳の専業主婦。夫の圭一と、近所に住み毎晩夕食を共にする姑と、娘の柚月と暮らしている。夕食のたびに姑は私の料理に「また手抜きね」と文句をつけ、夫は「掃除も洗濯も買い物も全部家電がやることだろう、専業主婦は何もできないのよ」と重ねた。「怠けてなんかいません、朝5時からお弁当作って」と返しても、姑は「お弁当ぐらい誰でも作れるわよ、私の時代は全部手洗いだった、今の主婦は甘えてる」と譲らなかった。
反論する気力すら残っていなかった。
15年前、私は新人賞を取り、編集会議も通って連載の話が来ていた漫画家だった。「ずっと夢だったんです」と喜んだ矢先、結婚するなら漫画をやめてくれ、家庭に入って欲しいと夫に言われた。「もう少しだけ待って」とお願いしたが、「子供だって欲しいしな」の一言に私は折れた。あの時の連載枠は別の新人に渡り、今その人は売れている。
ある夜、娘の柚月がこっそり自分で漫画を描き、投稿サイトに載せたところ「いいね」が500を超え、続きを望むコメントも来たと嬉しそうに報告してきた。それを知った夫は「まだ漫画やってんのか、口答えするな、塾にでも行け」と叱り、姑は「カエルの子はカエルね」と嘲笑った。
挙句、夫は柚月の私物のタブレットを取り上げようとした。「返して」と抗う柚月の目は、15年前に夢を諦めた時の私と同じ目をしていた。柚月にまで同じ言葉が向けられた瞬間、私の中で何かが決定的に変わった。「寄生虫やめるね。出ていくわ。」そう告げた私に、夫は「1人じゃ何もできねえだろうが」と鼻で笑った。
宣言から1ヶ月、夫は本気にせず変わらずモラハラを続けた。
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