妻が視力を失ったと訴えたのは、結婚して2年目のことだった。
ある朝突然、「何も見えない」と泣き出した。
俺は妻を守らなければならないと思った。
家の中から段差をなくし、家具の位置を変え、白杖を用意した。
妻を支えるため、残業の少ない部署にも異動した。
その生活を5年間、疑ったことはなかった。
だが最近、俺自身の体に異変が起きていた。
妻が毎晩用意する飲み物を口にすると、強い眠気とめまいに襲われた。
朝になると、前夜の記憶が曖昧になっている日もあった。
疲労のせいだと思い、誰にも相談していなかった。
検診当日も待合室でふらつき、看護師に支えられた。
その様子を見た女医が俺の症状を詳しく尋ね、妻の検査後、俺だけを別室へ呼んだのだ。
女医が見せた映像には、白杖を腕に抱えた妻が1人で病院へ入ってくる姿が映っていた。
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