元親友の娘・美咲は、私が院長を務める病院の勤務医だった。
患者にも職員にも誠実で、誰より仕事熱心な医師だ。
ただ、1か月前に院長室を訪ねてきた彼女は、憔悴した顔で退職届を差し出した。
「両親の望む人生を続けることに、疲れてしまいました」
聞けば、両親は彼女の勤務先や肩書きを周囲に自慢し、収入まで実際より大きく言いふらしていたらしい。
高級車や旅行の費用まで美咲に頼り、断れば「親を見捨てるのか」と責めた。
彼女は収入が下がっても、地方の小さな診療所で患者と向き合う道を選んだのだ。
「美咲! 病院を辞めるってどういうことよ!」
元親友が立ち上がった。
「年収3000万はどうなるの? 家のローンだってあるのよ!」
美咲は悲しそうに母親を見つめた。
「やっぱり心配なのは、私じゃなくてお金なんだね」
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