分譲マンションに住み始めて8年、管理費はずっと月19,800円のまま変わっていなかった。子どもの進学で家計を見直していたところだったので、金額を把握していたのは幸いだった。ある日、郵便受けに一枚の通知書が入っていた。「管理費改定のお知らせ」と印字され、来月から月33,200円に変更されると書かれていた。これまでの1.6倍を超える金額だった。
理事会からそのような話が出ていたという記憶はなかった。総会の議事録を確認しても、管理費の値上げについて議論された形跡はどこにもなかった。同じ棟に住む知人にも聞いてみたが、「うちにはそんな通知、来てないよ」と不思議そうに言われた。念のため他の階の知人にも連絡してみたが、やはり誰も同じ通知を受け取っていなかった。慌てて管理会社に電話をかけると、担当者は「規定通りの改定案内をお送りしています」とだけ答えた。詳しい説明を求めても、「詳細は理事会にご確認ください」と繰り返すばかりだった。
納得できないまま、もう一度通知書を隅々まで読み直した。差出人の印字も、封筒のデザインも、これまで届いていた管理会社からの通知と何も変わらなかった。
だからこそ、最初は本物の値上げ通知だと信じて疑わなかった。そこで気づいたのは、宛先の部屋番号だった。書かれていたのは「215号室」。私の部屋は「512号室」で、数字の順番が入れ替わっているだけの番号だった。
215号室に住んでいるのは、半年前に入居してきたばかりの住人だと聞いていた。まだ一度も顔を合わせたことはなかった。
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