母の三回忌を終えた夜、スマホに知らない番号から着信があった。
親戚も帰り、食器を片づけ終えたばかりだった。
「もしもし」
少し間があったあと、低い声がした。
「……久しぶりだな。叔父さんだ」
父の弟だった。
叔父とは、もう17年近くまともに話していなかった。
きっかけは、祖父が亡くなったあとに残された実家だった。
父は、
「親父が守ってきた家なんだから、簡単に手放すわけにはいかない」
と言い張った。
一方、叔父は、
「誰も住まない家に金をかけ続けても仕方ない。売ったほうがいい」
と主張した。
最初は意見の違いだった。
ところが話し合いを重ねるたび、昔の不満まで持ち出されるようになった。
最後には父が、
「結局、お前は金にしたいだけなんだろ」
と言った。
叔父も、
「兄貴は家を守りたいんじゃない。自分が正しいって認めさせたいだけだ」
と言い返した。
それきりだった。
叔父は実家に来なくなった。
母も父の側につき、家の中で叔父の名前が出ることはほとんどなくなった。
5年前に父が亡くなったときも、葬儀に叔父の姿はなかった。
だから電話口で、
「お前の父さんについて、今のうちに話しておきたいことがある」
と言われても、意味が分からなかった。
「どうして今日なんですか」
私が聞くと、叔父は少し黙った。
「今日だからだよ」
そして翌日の午後、駅前の喫茶店へ来られないかと言った。
次の日。
店に入ると、叔父は窓際の席に一人で座っていた。
最後に会った頃より、ずいぶん小さくなったように見えた。
私が向かいに座ると、叔父はいきなり言った。
「お前、俺と兄貴が最後まで一度も会わなかったと思ってるだろ」
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