義母から電話がかかってきたのは、平日の夕方だった。
夕食の支度をしていると、珍しく家の固定電話が鳴った。
「もしもし」
電話の向こうの義母は、いつもより少し早口だった。
「家の電話番号、変わってないわよね?」
突然そう聞かれた。
「変わってませんけど。どうしたんですか?」
「そう。ならいいの」
「何かあったんですか?」
もう一度聞くと、義母は少し黙った。
そして、急に声を硬くした。
「……あなたには関係ない話よ」
それだけ言って、電話は切れた。
義母はもともと、自分の昔話を進んでするような人ではない。
それでも、
「あなたには関係ない」
とまで言われると、さすがに引っかかった。
何だったんだろう。
そう思いながら台所へ戻った、その5分ほど後だった。
また固定電話が鳴った。
今度は、ディスプレイに市内の総合病院の名前が表示されていた。
ちょうど仕事から帰ってきた夫が、
「俺が出るよ」
と言って受話器を取った。
「はい」
しばらく相手の話を聞いていた夫の手が、突然止まった。
「……中村修一さん?」
私はその名前に聞き覚えがなかった。
夫は短く受け答えしたあと、
「登録の確認ですね。分かりました」
と言って電話を切った。
病院から病状の説明があったわけではない。
中村修一という人物が、緊急時の連絡先の一つとして我が家の固定電話を登録しており、その番号が現在も使われているか確認したかっただけだという。
でも、夫の様子がおかしかった。
「中村さんって誰?」
そう聞くと、夫はすぐには答えなかった。
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