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父の遺品整理中、40年近く送られなかった「拓也」宛の手紙が四十数通出てきた。母にその名を尋ねると、声を硬くして「その人のことは放っておいて」と言った
2026/08/18

父が亡くなり、実家の書斎を片づけていたときのことだった。

引き出しの奥、古い便箋の箱の下から、紐でまとめられた手紙の束が出てきた。

数えてみると、四十数通。

すべて父の字で、宛名には同じ名前が書かれていた。

「拓也様」

住所はない。

封筒には切手が貼られているものもあったが、どれにも消印がない。

一度も投函されなかった手紙らしい。

さらに気になったのは、その日付だった。

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いちばん古いものは、私が生まれる少し前。

今から40年近く前に書かれていた。

新しいものは、父が亡くなる数年前の日付だった。

つまり父は、何十年もの間、同じ「拓也」という人物に手紙を書き続けていたことになる。

それなのに、一通も送らなかった。

父の友人だろうか。

昔の仕事仲間か。

親戚の名前を思い浮かべても、拓也という人には心当たりがなかった。

その日の夜、私は居間にいた母に何気なく尋ねた。

「お母さん、拓也さんって人、知ってる?」

母は洗濯物を畳んでいた手を止めた。

ほんの数秒だった。

けれど、その反応で私はすぐに分かった。

母はその名前を知っている。

「お父さんの机から、手紙が四十通くらい出てきたんだけど」

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そう続けると、母の顔が少し硬くなった。

「……その人のことは、もういいの」

「知ってるの?」

「放っておいて」

普段の母からは想像できない、突き放すような言い方だった。

私はそれ以上聞けなかった。

ただ、拓也が父にとって単なる知人ではないことだけは分かった。

数日後。

もう一度、手紙の束を整理していたときだった。

父から拓也へ宛てた封筒とは明らかに違う、一通の古い封筒が混ざっていた。

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