「痛っ!」
夕食に辛子高菜を食べていたとき、歯茎に鋭いものが刺さった。
慌てて口から出すと、高菜に絡まった茶色い塊が落ちた。
最初は魚の小骨か、硬くなった野菜の茎だと思った。
ところが水で何度洗っても、その形は明らかに普通ではなかった。楕円形の表面から、針のような突起が何本も伸びている。
「何これ……」
家族も写真を見た瞬間、箸を置いた。
歯茎からは少量の血が出ていたため、私は口をよくすすぎ、残っていた辛子高菜を食べずに保管した。
異物も捨てず、小さな保存容器へ入れた。
商品の袋、賞味期限、製造番号、購入時のレシートも並べて写真に残した。
翌朝、メーカーのお客様相談室へ電話した。
事情を説明すると、最初に対応した担当者は言った。
「高菜の硬い茎ではないでしょうか」
「茎に見えないので、写真を確認してください」
私が送った画像を見た途端、担当者の声が変わった。
「こちらでは判断できません。現物をお預かりして調査します」
数日後、品質管理部から連絡があった。
異物は骨でも虫でもなく、原料の高菜を収穫した際に混入した、トゲのある植物の実とみられることが分かった。
畑で高菜と一緒に刈り取られ、色や大きさが似ていたため、選別工程を通過した可能性が高いという。
しかし、私は引っかかった。
「目視検査をしているなら、なぜこれほど大きなものが残ったんですか?」
担当者は一瞬黙った後、同じ製造日の検査記録を確認すると約束した。
翌日、再び電話が来た。
記録を調べると、その日は選別機の清掃後に位置調整が行われており、一部の原料が通常とは違う場所を通過していたことが判明したという。
メーカーは同じ製造番号の商品を自主的に回収し、保管在庫もすべて再点検した。
私の歯茎は念のため歯科で診てもらったが、幸い深い傷や異物の残留はなかった。診察代はメーカーが負担し、後日、調査報告書と正式な謝罪文が届いた。
報告書には、選別機の再調整、目視確認の人数増加、原料受け入れ時の検査強化が記載されていた。
代わりの商品も送ると言われたが、私は断った。
まだ、辛子高菜を見るとあの感触を思い出してしまうからだ。
たった一つの小さな異物でも、口に入る食品では「仕方ない」で済ませてはいけない。
もし同じことが起きたら、すぐに捨てたり、洗い流したりせず、商品と異物、袋、製造番号、レシートを保管してほしい。
あの不気味な形の実は、私の勘違いではなかった。
そして証拠を残したことで、同じ商品を口にする誰かのけがを防ぐことにつながった。