残業帰りの電車の中で、私は夫にLINEを送った。
「遅くなってごめんね。今から帰るけど、ご飯食べた?」
この一文を打つのは、ほとんど癖みたいなものだった。
自分はまだ食べていなくても、家のことが気になる。
家に着いてドアを開けた瞬間、ふわっと漂ってきた匂いで足が止まった。
炒飯の匂いだった。
その瞬間、正直ほっとした。
「あ、作ってくれたんだ」
疲れた体が、少しだけ軽くなった気がした。
キッチンに入ると、確かに“炒飯を作った痕跡”があった。
フライパン、まな板、散らばったネギと米粒。
洗い物はそのままだけど、まあいいかと思った。
だから、何の疑いもなく言った。
「わー、炒飯作ってくれたんだ!私の分は?」
夫はスマホを見たまま、淡々と答えた。
「え?ないけど」
一瞬、言葉が出なかった。
頭の中で、短い沈黙が流れる。
え……?
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