国内最大手企業との六百七十億円規模の共同プロジェクト。
その最終商談を翌日に控えた夜、私は会議室で一人、資料を確認していた。
私は三浦誠一、四十一歳。
現在の肩書は「課長補佐」。だが、この商談に関して言えば、実務・交渉・条件設計のすべてを一手に担ってきたのは、他でもない私だった。
その扉が、乱暴に開いた。
「おい三浦、まだいたのか」
現れたのは、常務の河野だった。
腕を組み、見下すような視線を向けてくる。
「悪いがな、この案件――お前には任せられん」
予想していなかったわけではない。
だが、次の一言はさすがに耳を疑った。
「京大卒の部長、佐伯に交代させる。学歴も実績も、お前とは格が違うからな。ははっ」
乾いた笑いが会議室に響いた。
私は黙って河野常務を見た。
佐伯部長。確かに京大卒で、社内評価も高い。
だが、この商談の中身を、彼は表面しか理解していない。
「条件の細部、相手企業の懸念点、海外子会社との契約リスク……すべて把握していますか」
私がそう問うと、常務は鼻で笑った。
「細かいことは部長が何とかする。
お前みたいな現場叩き上げの無能に、六百七十億を任せられるかよ」
無能。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=JUJXaVlSDvQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]