私は地方都市の片隅で、小さな営業所に所属する運転手だ。肩書きだけを見れば、誰もがそう言うだろう。「所詮、車を回す人間だ」と。だが、私にとってこの仕事は、ただハンドルを握るだけではなかった。人と人を繋ぐ道を選び、現場の温度を知り、数字の裏側を見続ける――それが私の誇りだった。
勤務先は、全国に八百店舗を展開する大手チェーンの関連会社だ。
東京本社を頂点に、地区本部、各エリア、そして店舗へと、綺麗に整えられた指揮系統がある。だが実際は、現場ほど泥臭い。納期、陳列、クレーム対応、近隣との調整、そして人員不足。誰もが忙しく、余裕を失いがちになる。
私はその「余裕」を取り戻すために、運転手として現場を回りながら、気づいたことをメモに残していた。配送車の動線が悪い店、バックヤードが詰まる時間帯、スタッフの配置の癖、客層の波。運転席から見える景色は、店の未来の形に直結していたからだ。最初は誰にも見せるつもりはなかった。運転手が口を出すなど、生意気だと笑われるのがオチだと思っていた。
ところが、そのメモが変わるきっかけがあった。
半年前、私の担当するエリアで新規出店計画が進んだ。既存店舗の売上が伸び悩み、閉塞感が漂う中で、地区部長の大槻は成果を焦っていた。数字だけを見て、現場を叱り、会議では大声で成功を約束する。だが現場の誰も、彼の言葉を信じていなかった。
新店の候補地を回る際、私は運転手として部長に同行した。下見の途中、部長が電話で怒鳴り散らす声を聞いた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=CPi17Gh7MUI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]