「1か月で9998.5立方メートル使用しています。重大なガス漏れの可能性があります。すぐに元栓を閉め、建物の外へ避難してください」
ガス会社の担当者からそう言われた瞬間、私は言葉を失った。
その日の朝、郵便受けに入っていたガスの検針票。
請求額は、572万4500円。
最初は印刷ミスだと思った。
だが、何度見直しても数字は変わらない。
前月の使用量は、わずか1.5立方メートル。
それが今月は、9998.5立方メートルになっていた。
普通の家庭で、たった1か月に約1万立方メートルも使えるはずがない。
それでも電話口の担当者は、入力ミスより先にガス漏れを疑った。
「火気には絶対に触れないでください」
「窓を開けて、ご家族と一緒に外へ出てください」
私は慌てて元栓を閉めた。
家族を外へ出し、窓を開けた。
事情を聞いた隣人たちも、次々に部屋から出てきた。
「本当に漏れているの?」
「爆発したらどうするのよ」
不安そうな声が、廊下に広がった。
中には、私を責める人までいた。
「何か勝手に機器を取り付けたんじゃないの?」
「普段からちゃんと点検していたの?」
まるで、私の管理不足で建物全体を危険にさらしたかのような言い方だった。
そこへ大家からも電話が入った。
「もし私物の器具や改造が原因なら、検査費用も修理費も負担してもらいますからね」
まだ原因すら分かっていない。
それなのに、責任だけは先に私へ押しつけられていた。
約40分後、ガス会社の検査員が到着した。
検知器を持って室内へ入り、台所、給湯器、配管、ガスメーターを順番に調べていった。
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