「ここは駐車禁止です。すでに確認標章の手続きに入っています」
掛け声を聞いた瞬間、私は抱えていた郵便物を落としそうになった。
赤い郵便車の横には、2人の駐車監視員が立っていた。
一人は車両を端末で撮影し、もう一人は車体番号を確認している。
「待ってください。今、配達から戻ったところです」
私は息を切らしながら駆け寄った。
車を離れていたのは、わずか3分ほど。
屋根の警告灯は点灯したまま。
ハザードランプも消していない。
助手席側の見える場所には、「郵便物配達中」と書かれた作業表示も置いてあった。
それでも監視員は、こちらを見ようともせずに言った。
「配達中でも、違反は違反です」
私はすぐ近くのマンションに、本人限定受取の書留を届けていた。
受取人は一人暮らしの高齢女性。
足が悪いため、インターホンを押してから玄関へ出てくるまで少し時間がかかった。
「ご本人の署名が必要な郵便物だったんです」
「車から離れた時刻も、配達端末に残っています」
そう説明しても、返ってきた言葉は冷たかった。
「それはあなたの仕事上の事情ですよね」
「仕事だからといって、何をしても許されるわけではありません」
周囲には、いつの間にか数人が集まっていた。
「郵便車ならどこでも停めていいのか」
「みんな駐車場を探しているのに」
そんな声まで聞こえてきた。
まるで私は、配達を口実に長時間休憩していたかのようだった。
腹が立った。
だが、ここで感情的になれば、私のほうが悪者にされる。
私は言い争うのをやめた。
そして、確認標章に記載された時刻をスマートフォンで撮影した。
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