朝、いつものように出勤準備をしていた私が、職場の入り口で目にしたものは、決して無視できない光景でした。壊れかけた竹籠が道端に転がっているのを見つけ、その中には、生まれたばかりの子猫がひとり、震えていました。まだ体は濡れており、へその緒がついたままで、命の危機に瀕している様子がひしひしと伝わってきました。
同僚たちがその子猫を見て口々に言うのは、「そんなに小さい猫は育たないよ」「関わらない方がいい」といった言葉でした。
冷静に考えれば、その言葉が正しいことは理解していました。生まれて間もない子猫を育てることは、命に関わるほどのリスクが伴うことも知っていたからです。しかし、その時、私はその小さな命を無視することができませんでした。
子猫は私の指にそっと触れました。小さな鼻先で私の指を感じ取ったその瞬間、私の心は一気に決まりました。それは、ただの偶然ではなく、子猫が私に「助けてほしい」と必死に訴えているように感じたのです。その瞬間、私は見ないふりをすることができませんでした。迷いながらも、私はその壊れかけの竹籠をしっかりと抱え、急いで動物病院へ向かいました。
病院に着くと、担当の先生は少し驚いた様子で子猫を見つめました。
「生後12時間も経っていない。このまま母猫から離れていると、かなり厳しい状態だ」と告げられました。冷たい言葉でしたが、私はその場でその子猫を置いていけませんでした。覚悟ができていたわけではありません。ただ、どうしてもその命を見捨てることができなかったのです。
家に帰ると、私は全く経験のない子猫の世話に困惑しました。すべてが手探りの状態でした。
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