平成22年、私はイオンのペットショップで一匹の柴犬と出会った。1歳を越えたその犬は、すでに売れ残ってしまい、ショップの隅で静かに過ごしていた。最初はどうしても手を出すべきか迷った。しかし、店員さんの「自分たちで面倒を見るから」という言葉に背中を押され、私はその犬を迎える決心をした。それが、私と彼女の14年間の始まりだった。
あの日から、彼女は家族の一員として私たちと共に過ごし、たくさんの思い出を作ってくれた。元気な時には、毎日の散歩が楽しみで、私が帰ると必ず玄関で出迎えてくれた。どんなに疲れていても、彼女の笑顔に癒されて、家に帰るたびに安心感を感じていた。柴犬ならではの愛嬌と気まぐれな性格に、私はすっかり心を奪われていた。
でも、歳月が経つにつれて、彼女の体も変わっていった。最初の頃のように走り回ることはなくなり、散歩もゆっくりと歩くようになった。それでも、毎日の散歩だけは欠かさずに続けていた。少しずつ老化が進み、出迎えもなくなり、体力も衰えていった。しかし、彼女は決して私から離れず、静かに寄り添ってくれていた。
そして、14年が過ぎた令和6年10月5日、その日は忘れられない日になった。テレビでは『踊る大捜査線』の映画が放送され、懐かしいシーンが流れていたその瞬間。彼女は、苦しげな一鳴きをして、静かに息を引き取った。そのタイミングが、まるで彼女が私たちに最後の挨拶をするかのようで、織田裕二の名セリフが流れるその瞬間に、彼女が逝ってしまったことに、私は言葉を失った。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください