夫が差し出してきた設計図を見た時、私は冗談だと思った。
「俺たちと父さん母さんが住む二世帯住宅だよ」
建てる場所は、私の実家だという。
両親は数か月前、元気なうちに自分たちで選んだサービス付き高齢者住宅へ移っていた。
だからといって、家が夫のものになるわけではない。
ところが夫は違った。
「君は一人娘だろ。どうせ将来相続するんだから、今も君のものみたいなものじゃん」
さらに父から生前贈与してもらい、名義変更を済ませればいいと言い出した。
驚いたのは、それだけではなかった。
夫はすでに工務店へ出向き、仮の設計図を作らせていた。
銀行にも相談し、私との共同ローンまで考えていた。
義両親にも話は通っていた。
義母は「やっと新しい家に住める」と喜び、庭に植える花まで決めていたという。
私はそこで、夫がなぜ結婚後ほとんど交流もなかった私の両親の財産に、これほど執着するのか怖くなった。
そして事実を伝えた。
「実家の土地と建物は、もう両親のものじゃないよ」
両親は動物が好きで、長年保護活動を支援していた。
高齢者住宅へ移る際、土地と建物を動物愛護のNPO法人へ寄付していたのだ。
名義変更もすでに完了し、家は保護猫のための施設として使われる予定だった。
夫は絶句した。
そして次の瞬間、
「そんな大事なこと、なんで相談しなかったんだ!」
と怒鳴った。
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