俺が勤める会社は、工場向けの特注機械を製造している中小メーカーだ。
大手企業ほど人数は多くないが、その分、一件一件の案件に対して技術者が深く関わり、顧客の要望に合わせた完全オーダーメイドの設備を作ることを強みにしていた。
その中でも、俺が担当していたのは、とある製造会社から依頼された特注機械の開発案件だった。
その機械は、普通の既製品では対応できない特殊な加工を行うための設備で、設計から部品製作、試運転まで半年以上かけて完成させたものだった。
担当者との打ち合わせも何度も重ねた。
「この部分はもう少し耐久性を上げたい」
「作業員が扱いやすいように操作パネルを変更してほしい」
そんな細かい要望にも対応し、現場の意見を取り入れながら作り上げた。
もちろん、費用もそれなりにかかっている。
契約金額は数千万円規模。
会社としても大きな案件であり、納品の日を社員全員が楽しみにしていた。
ところが――。
納品予定日の前日。
突然、取引先の部長から電話がかかってきた。
「もしもし、○○さん? 例の機械なんだけどさ」
嫌な予感がした。
この部長は以前から少し問題のある人物だった。
契約後になってから追加要求を繰り返したり、急な仕様変更をお願いしてきたりすることが何度もあった。
そのたびに俺たちは可能な限り対応してきた。
しかし、今回の電話の内容は予想を超えていた。
「納品なんだけど……やっぱりキャンセルでw」
一瞬、耳を疑った。
「え……キャンセル、ですか?」
「そうそう。社内で話した結果、今回は必要ないってことになってね」
まるでコンビニの商品を取り置きキャンセルするような軽い口調だった。
俺は思わず黙ってしまった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=GHFb5DYFkd4,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]