「彼と一生、幸せに暮らしてください」
その言葉を聞いた瞬間、私は意味を理解できなかった。
目の前には、家具も家電も、思い出の写真も、カーテンすら残っていない空っぽの部屋。
つい数時間前まで、ここは私と夫が七年間暮らしてきた家だったはずなのに。
「……なに、これ……?」
震える足でリビングへ進むと、床の上には一通の封筒だけが置かれていた。
そして背後から、聞き慣れた声が響いた。
「驚いた?」
振り返ると、そこにはスーツケースを引いた夫が立っていた。
しかし、いつもの優しい笑顔ではなかった。
冷たいほど穏やかな表情。
まるで、もう私を妻として見ていないような目だった。
「あなた……どうして……」
夫は静かに言った。
「君が俺の独身時代の貯金八百万円を使い込んでいたこと。全部知っていたよ」
「ち、違うの……!待って、話を聞いて!」
必死に言い訳を探す私を、夫はただ見つめていた。
私たちは結婚して七年。
都内の賃貸マンションで、平凡ながら穏やかな生活を送っていた。
夫は大手商社勤務。
仕事は忙しくても、家事にも協力的で、私を大切にしてくれる人だった。
けれど、私はいつからか不満を抱えていた。
「私はもう女性として見られていない」
そんな寂しさを勝手に膨らませていた。
そんな時、現れたのが職場の本部長だった。
五十五歳、離婚経験のある彼は、大人の余裕と甘い言葉を持っていた。
「旦那さんは君の魅力を分かっていない」
「俺なら君を一人の女性として大切にする」
その言葉は、冷え切ったと思い込んでいた私の心を簡単に溶かした。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Pc4Fr3UD-9M,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]