「半額にしろ。無理なら契約終了だ」
突然告げられた言葉に、俺は静かに頭を下げた。
「……わかりました。契約終了でお願いします」
相手は驚いたような顔をした。
きっと、俺が必死に引き止めると思っていたのだろう。
だが、俺の胸の内に浮かんだ感情は悲しみではなかった。
むしろ、長年背負ってきた重荷から解放されるような安堵だった。
「やっと……契約終了できる」
もう二度と、あの店へ納品することはない。
そう思った。
俺の名前は明石。
急逝した父の後を継ぎ、トラバス牧場を経営している。
父が一生をかけて守ってきたもの。
それはただの牛乳やバターではない。
牛が育つ環境、餌となる牧草、土づくり。
すべてにこだわり抜いた「品質」だった。
父はよく言っていた。
「安いものを作るのは簡単だ。でも、本当に価値のあるものを作るには時間が必要なんだ」
その言葉を胸に、俺は毎日牧場に立っていた。
そんな中、長年取引を続けてきた洋菓子店「パティスリー坪井」から呼び出しを受けた。
店長の坪井さんとは、父の代から三十年以上の付き合いがある。
「明石君、今後の仕入れについて相談したい」
「何でしょうか?」
嫌な予感はしていた。
そして、その予感は的中した。
「正直に言うと、君たちの乳製品は高すぎると思っていたんだ」
胸が痛んだ。
父は昔、坪井さんが店を始めたばかりの頃に助けてもらった恩を返すため、利益をほとんど取らずに納品していた。
それを俺も受け継いできた。
しかし坪井さんは続けた。
「半額にしてくれ。できないなら契約終了だ」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=5eTmSkQlTGc,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]