美濃運輸の配車主任、堂本が異変に気づいたのは、深夜3時47分のことだった。スマートフォンが立て続けに鳴り、燃料カードシステムから「利用停止」の通知が23件届いていた。対象は保有する全60台のトラック。会社が契約しているすべての車両で、給油ができなくなっていた。堂本は最初、深夜のいたずらメールか何かだと思い、半信半疑のままアプリを開いた。
しかし表示された画面には、赤い文字で「全カード利用停止中」とだけ表示されていた。
早朝5時出発の便は21件残っていた。給油できなければ、当日便はすべて動かせない。堂本はすぐにカード会社のコールセンターに電話をかけたが、深夜対応の窓口では「システム上、全カードが一時停止対象になっています」という定型の説明しか得られなかった。理由を尋ねても、「セキュリティ上の判断です」と繰り返されるだけだった。
契約から8年、燃料カードが一斉に止まったことは一度もなかった。堂本は念のため、先月更新したばかりの契約書を引っ張り出した。条項を読み返していると、契約書の隅、これまで気づかなかった小さな欄に、聞いたことのない会社名が印字されているのに気づいた。
「オイルパス・ネクスト株式会社」。堂本が普段やり取りしている担当者の会社名とは、微妙に違っていた。社内の誰に聞いても、その社名に心当たりのある者はいなかった。経理担当も「請求書はいつも通りの会社名で届いている」と首をかしげるばかりだった。
午前4時20分、大口取引先から「今日の便は問題ないか」という確認の電話が入った。堂本はまだ社長にも状況を報告できていなかった。
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